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「うれしくないっすね」


 ニュルンベルクの清武弘嗣は、0-0のドローに終わったアウクスブルク戦後、苦笑交じりにそう言った。

 ドローとはいえ、清武は、後半19分でピッチを去り、移籍後最短での途中交代。内容もニュルンベルクの完敗だった。ほとんど決定的なチャンスが作れないどころか、前にボールを運ぶのすらままならない。センターバックは、可能性のないロングボールを蹴り続け、中盤ではパスミスのオンパレードだった。試合終了後、サポーターからボロ負けしたような猛烈なブーイングが起こったが、それほど低調な試合だったのである。

「楽しくなかったです」

 清武は、少し寂しそうに、そう付け加えた。

 ニュルンベルクは、8節を終えて15位。3節までは、清武の個人技によるゴールなどもあり、2勝1分とまずまずだった。ところが、(危険なのは)「トップ下の清武だけ」と分かってしまうと、各チームのマークが格段に厳しくなった。すると、チームも一気に下降線を下り、4連敗。攻撃面での清武頼りが浮き彫りになったのである。

■清武がボールを持っても、誰もついてこず、FWは棒立ちのまま。

 清武潰しは、露骨だった。

 たとえば、ボランチから清武に縦パスが入ると、踏み倒すような勢いでファウルまがいのチャージを仕掛けてきた。こういった際のボールキープは決して得意ではない清武だが、うまくタイミングを取るなどして、彼なりに一生懸命こなしていた。

「それは、トップ下の自分の仕事なんでね。相手がどう来ようが跳ね飛ばされないように、100%キープできるようにやらないといけないと思っています」

 殊勝にも清武はそう話していたが、そのチャージを受け止め、反転して前を向いた瞬間、筆者は唖然とした。

 誰もついてこないのだ。相手のスペースを突く動きも裏に抜ける動きもなく、ワントップのFWも棒立ちのままだ。

 もちろん、パスやコンビネーションで崩すという姿勢も見えない。必死にキープしても見ているだけで、パスコースに顔を出すとか、それを受けて仕掛けるとか、フリーランしてスペースを空けるとか、そういう動きがほとんどなかったのである。

■清武のプレーに共鳴する選手が一人でも出てくれば……。

「このチームでは、いい形でとか、前向いてボールをもらってとか思っていても、なかなかできない。パスサッカーも諦めてはいないけど、パスコースもほとんどないので現実的には難しい。みんな、やたら足元にボールを欲しがって、しかもやりたいようにやっているんでね」

 それでも個々の技術が高ければ、まだ可能性はある。清武のプレーを見て、感じ、共鳴してくれる選手が一人でも出てくれば必ず良くなるという期待が持てる。

 しかし、アウクスブルク戦はもちろん、過去のどの試合を見ても、共鳴しようという意識は見えてこない。むしろ、ベクトルはバラバラだ。さらに、プロとしてありえないパスミス、凡ミスを繰り返している。

 こういうチーム状態では、清武一人の力でどうこうするという限界を越えている。メッシが一人いても他選手のレベルが至らなければ試合には勝てないのと同じだ。ましてや清武は、助っ人FWのようにボールを持ちながら一人、二人を抜いてゴールを決めるタイプでもない。それでも、黙々と一生懸命にプレーしている姿を見るのは、ちょっと痛々しいほどだ。

■「個人のスキルを伸ばしていきたい」と語る2つの理由。

 ロンドン五輪の時は、苦しくても楽しそうにサッカーをしていた。それは、チームメイトと共通意識の下、やろうとするサッカーが全員で出来ていたからだ。

 だが、ニュルンベルクでは、仲間と同じ意識やサッカー観を共有できず、極端に言えば単独でサッカーをせざるをえない。そこで清武は、ひとつの結論に達したという。

「このチームは、蹴るサッカーだというのはもう分かっているので、今は個人でボールを持ったらドリブルを仕掛けるしかないと思っています。それしか選択肢がないんですよ。そうして、ドリブルをはじめ個人のスキルを研けば、代表ではパスサッカーができるし、その中でも生かせるじゃないですか。だから、このチームでは、勝ちにいくのはもちろんですけど、プレーでは個人のスキルを伸ばしていきたいと思っています」

 清武が、そう考えたのは、日本代表の欧州遠征で、ブラジルに0-4で敗れた試合が大きく影響している。その試合では、フランス戦では出来なかったボールを回すことも前に運ぶことも出来た。だが、容易にフィニッシュすることはできなかった。真っ向勝負を挑んだが跳ね返されたのだ。試合後、清武は、「ブラジルは、個のレベルがまったく違った。そこを上げていかないと世界でゴールを奪えない」と、語っていた。

■ブラジル戦で感じた「個のスキルの差と、その重要性」。

「ブラジル戦では、個人のスキルの差と重要性を感じました。ゴール前までは行けたけど、そこから先は崩せなかった。そこを打ち破るには、やはり個人の技術が必要になるというのが分かった。そこを磨いていかないと世界じゃ通用しない。

 まぁ今のチームのスタイルは、そういうことにトライできる状態なんでね。そうして、少しでもうまくなっていくことを考えないと。やっぱり、楽しくサッカーできないと、どうしてもネガティブに考えてしまうんで、今は、そういう時期(個人を磨くこと)なんだと思ってやっていこうと思います」

 ニュルンベルクが、この後、サッカーのスタイルを変え、質を劇的に上げていくことは、現状を見る限り想像しにくい。そんな中、自分のできることを見付け、習得し、ただでは起きないことを証明しようとしている清武のポジティブな精神は、海外でプレーしていく上では非常に重要なことだ。

「今のチームで多くを望んでいても変わらないですし、何か不満を言っても仕方ない。サッカーするのは自分ですし、やれることをするだけ。なんで、今の目標は、ひとりでチームの状況を変えられるような選手になることっすね」

 清武は、自信あり気に、少し笑った。

 日本代表で得た刺激とニュルンベルクの現状からそうなる決意を固めた。だが、掲げた目標は、試練ではない。それは、自らがさらに成長するためにサッカーの神様から与えられたチャンス。そう、前に進む覚悟を決めた清武には、ゴールを狙うエゴが芽生え、個人突破のノウハウが確実に蓄積されていくことだろう。

http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20121026-00000001-number-socc 










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