image
--- Sponsored LINK ---
 

プレミアリーグ第9節のチェルシー対マンチェスター・ユナイテッドは、3-2でユナイテッドの勝利で終わった。

チェルシーファンにとってホームで10年以上負けていないユナイテッドを相手に、2人も退場者が出て負けたのはショックな出来事だっただろう。しかし、この試合で苦い思いをしたのは何もチェルシーファンだけではない。それは日本に多くいる香川ファンも同様のはず。なぜなら香川が負傷欠場したときから、攻撃が日増しに良くなっているのだ。

香川は今シーズン、バイタルエリアで違いを作ることができ、またトップ下、サイドハーフ、センターハーフと複数のポジションを務められることをファーガソン監督に評価されて移籍した。

香川の本職のポジションはトップ下。ユナイテッドのエースであるルーニーと同じポシションである。ルーニーを本職のポジションから押しのけてまで、香川がユナイテッドのトップ下でプレーするのは難しいだろう…というのが筆者の予想だった。

しかし、驚くべきことに開幕のエバートン戦はルーニーがワントップに移ってトップ下でスタメン。その後も、代表戦の影響やローテーションの関係で外された試合以外では、基本的にすべてスタメンで起用された。ファン・ペルシが加入した後も、ルーニーをサイドハーフに追いやり、彼らとの共演も果たしている。

これはルーニーに対しては、「君ならどこでもうまくやれる」、香川に対しては「君はトップ下ならうまくやれる」という違った形の信頼の証と同時に、初めは語学が堪能ではなく意思疎通がうまく取れない東洋人に、得意のポジションでプレーさせることでうまくチームに溶け込むようにと、名将のチームマネージメントの一貫なのだろう。そのように勝手に納得していた。

だが、シーズンが開幕して2カ月が経っても、試合を見る限りどうもチームになじんでいく様子が見えない。そもそも香川という存在はユナイテッドにおいては異端なので、それが目立ってしまっている。

ユナイテッドは国内では、4-4-2で縦に速いシンプルなサッカーをするクラブ。それは技術や身体能力のような基本能力で国内の他のクラブより勝っていて、なおかつ老かいな監督によって能力の高いプレーヤーがまとまり、勝ち続けることでチームにはウイニングメンタリティーが満ちていく。自分たちと同じようなサッカーをする国内でなら、能力差だけで基本的には問題なく勝ち続けることができる。それは国内における最多優勝回数がすべてを物語っているだろう。

しかし、技術的にはそん色ないが、身体能力は大きく劣っている香川は、そういう縦に速いシンプルなプレーをするタイプだろうか。実際のシーンを例に出して比較してみよう。

ルーニーはセンターハーフから縦パスを受けると、一度足下に収めてキープ。そこからサイドチェンジしたり、強引に前を向いてドリブルしながら他のプレーヤーが上がって来るのを待ったりする。

一方で香川は基本的にセンターハーフから縦パスを受けるとワンタッチでセンターハーフに返す。というのも、香川は縦パスをトラップしてキープする身体能力がないので、一度センターハーフに戻し、動き直してフリーになった後にもう一度センターハーフから縦パスもらい直してからターンするのを好む。香川のプレーはルーニーに比べて1プレー多く、ユナイテッドのプレーヤーからすればシンプルではなく分かりづらい。このようなスタイルはユナイテッドというより、バルセロナのものに近い。バルセロナのパス&ムーブは香川のようなプレーがチーム全体で連続して、初めて機能するのだが、ユナイテッドではイメージの共有が少なく連動の頻度が足りていない。

また他にも、香川は基本的にセンターにとどまって良いポジショニングをとり続け、とにかく足下で受けようとする。ユナイテッドの他のフォワードやトップ下のプレーヤーたちは、センターにとどまらずサイドに流れてボールをキープしたり、相手DFの裏のスペースへのランニングをすることでマークを引きつけるなど、オフザボールの運動量が圧倒的に違う。

結局、ユナイテッドのプレーヤーにとって香川はセンターにいるものの、どう縦パスを当てたらいいのか分かりにくく、さらにオフザボール時のランニングもないために味方のためにスペースを作ってやることも出来ず、ビルドアップにおいて貢献できているシーンが少ない。もちろん全くないというわけではない。たまに良い形でボールを受けられれば、チャンスも作る。実際アシストもゴールもしている。しかし現状では、香川は自分の得意な形でしか輝けないプレーの幅の狭いタイプだと言わざるを得ない。

ドルトムントではチームの中心に据えてもらい、うまくフィットして存分に自分の良さを発揮したが、残念ながらユナイテッドは香川中心ではない。そのサッカーの中に自分をうまく当てはめることが出来ていない。日本代表でも自分の良さを発揮し切れていない理由の一つはこれだろう。

しかし、香川がユナイテッドにとって異端であるのはファーガソン監督からすれば百も承知だろう。それでもあえて香川を獲得したのは、従来の4-4-2だけでは国内では勝てても、欧州のトップレベル相手には勝てないと判断した、名将の一つの挑戦だ。ファーガソン監督は高齢にして、未だ情熱を失うことなく、向上心を持ち続けていることで有名である。

チャンピオンズリーグ決勝で二度も苦杯をなめさせられたバルセロナが持つ要素を、自分のチームに取り込もうとして元監督のペップ・グアルディオラとアメリカで密談し、教えを請うたとの噂もある。

ならば香川獲得は、ユナイテッドにバルセロナの要素を加えようという試みの一貫だろう。しかし、ユナイテッドがバルセロナやドルトムントのようなポゼッション志向のチームに完全に生まれ変わることは難しい。なので、香川は香川でチームになじむためにも自分のプレーの幅を増やさなければならない。

具体的に言うなら、オフザボールでのランニングを増やして味方のためにスペースを作るようにするのか、マンチェスター・シティのシルバのように身体能力で劣る欠点を補って余りある技術でボールキープして、パスを展開するべきだ。現実的には前者のほうが簡単ではないだろうか。

現段階ではファーガソン監督からの信頼が厚いようなのですぐに見切られることはないだろう。しかし、シーズンを通して香川がプレーの幅を増やす様子が見られないならば、段々と信頼を失っていき、ベンチに座る時間が長くなるかもしれない。

つまりは「郷に入りては郷に従え」ということだ。

香川がユナイテッドにフィット出来る日が来るのを願うばかりだ。


文/内藤秀

http://news.livedoor.com/article/detail/7098048/