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 開幕から好調を維持してきたフランクフルトだが、ここにきて少しペースが落ちてきている。それにともない、一時は3試合連続ゴールを決めた左MFの乾貴士もまたゴールから遠ざかっている。

 最下位であるグロイター・フュルトとの試合が1対1の引き分けに終わったあと、乾はこう話した。

「(自分の調子については)イマイチわからないですけど、迷いがあるのかなと思います。でも、これが自分の今の実力だと思っているので、しっかり受け止めて来週また試合あるのでしっかりと頑張りたいです」

 フュルトとの試合でも前半12分にペナルティエリア内でフリーでシュートを放つチャンスがあったが、シュートはGKにキャッチされてしまう。57分には交代を命じられ、ベンチに下がった。

「チャンスは1回ありましたし、それをしっかり決めていれば2-0で勝ちきれたのかなとは思いますけど。まぁ、ああいうところを決めていかないといけないなと思います」

 そう反省の弁を口にした。







■注目度が低かった開幕直後の時期だから、活躍できたのか!?

 ブンデスリーガの'12-'13シーズン開幕時点では、ほとんどの人は乾に注目していなかった。「キヨタケの注目度が高いのはわかる。それに比べてイヌイへの注目度が低すぎるのは理解できない。イヌイは良い選手なのに……」と、多くの日本人の移籍にたずさわるドイツの代理人クロートは開幕前に疑問を呈していたものの、それは例外だった。

 乾が1部でプレーするのは初めてであること、そして所属するフランクフルトが今季から1部にあがったチームというのもあって、メディアやファンだけではなく、フランクフルトはブンデスリーガの他のクラブからの注目度も低かった。それゆえに、開幕当初はチームとしても自分としても、良いプレーを楽々とみせられていたと乾は考えている。

■「今のままじゃ、まだまだ、甘いのかな」

「(ゴールを量産していた時期と)特に感じが違うとかはないです。でも、やっぱり、フランクフルトなんてナメてかかられていた部分はあった。だからね、そういう部分で、ちょっと先手、先手はとれていたのかなとは思います。まぁ……自分なんて、日本人で、別に注目もされていなかったし。そういう意味では、本当に、楽だったのかなとは思いますけど、そうやって注目されている中でやらないといけない」

 そして、乾は自分を諭すようにこう話している。

「だからね、俺は、それ(ゴールを決めない試合)をもっと減らしていかないといけないですし、1試合に1点、2試合に1点とか、そういうペースでとらないと上には行けない。今のままじゃ、まだまだ、甘いのかなと自分では思っています」

■「2軍落ち」との日本での誤報は現地紙の誤訳が原因。

 さらに先日は、心無い報道による被害も受けた。 

 乾が連続ゴールを記録しているときには、毎日のように乾をたたえる記事を手を替え品を替えて掲載していたビルト紙が、1-2で敗れたシュツットガルト戦では前半45分のみで交代を命じられた乾をバッシングする記事を掲載したのだ。

 プレーの内容についての批判ならば正当なものだったが、取材をせずに根拠もなく、レギュラー降格が確定したかのように伝えた。

 さらに、「(シュツットガルト戦翌日の練習で)乾は先発組と軽く走るだけでなく、(試合に先発しなかった)サブ組と練習しなければならなかった」としたビルト紙の記事を日本メディアが誤って訳し「リザーブチーム(2軍)行きを命じられた」と報じてしまった。

 もちろん、乾はこうした報道を否定して、サブ組の練習に自ら志願して参加したことをあきらかにしている。

■「浮かれることはない。なんもしてないですから、まだ」

 フランクフルトが1部に昇格したばかりのチームとして開幕から連勝を続け、自身もゴールを決めていたころとの落差はあまりに大きい。周囲のリアクションは正当なものとは言えないが、チームも乾も注目される存在となったがゆえに、こうした状況に置かれているのは確かだ。

「まぁ(ボーフムに所属していた昨季と比べて)2部と1部がまず、違うし。いまは良い順位にいるのでね、そういう意味では注目度はたぶん違うと思います。でも、浮かれることはないですよね、別に。なんもしてないですから、まだ」

 そう話す乾は、フランクフルトの一員として、自らの存在価値を証明していくのはこれからだと考えている。

 周囲から厳しい目を注がれ、対戦相手からの警戒も増している今こそ、乾の真価が問われているのだ。


(「ブンデスリーガ蹴球白書」ミムラユウスケ = 文)

http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20121109-00000001-number-socc