マガト前監督の解任後、ボルフスブルクは一気にチームカラーを変えようとしている。11月15日には、ゼネラルマネージャーにクラウス・アロフス氏の就任が発表された。アロフス氏は、直前までブレーメンで強化部長を務めていた人物。13年間の任期中に2度のDFB杯優勝、5年連続チャンピオンズリーグ出場権獲得に導いている。
今なぜ、ボルフスブルクのGMに就任したのか。マガト前監督がGM職と監督職を兼務していたため、解任後は空白になっていたためだ。豊富な資金をもつボルフスブルクのGMに就任し、「大きなポテンシャルをもつチーム」とアロフス氏は前向きだ。また、アロフス氏は就任の会見で、ケストナー暫定監督の仕事ぶりを評価すると語っており、ケストナー監督がしばらくは指揮を続けるであろうと見られている。
実際、マガトが去って以降、チームは4勝1敗といたって好調だ。ニュルンベルクに敗れはしたが、再び2連勝し、今後も波に乗っていけそうだ。何よりの違いは、先発メンバーが固定されていることだ。例えば昨季の長谷部誠のように、サイドバックからボランチ、トップ下までのすべてをこなすことを求められるというような奇妙なことはなく、ポジションごとに、適材適所で選手が配置されている。
5戦を同じメンバーで戦っていることから、当然ながらコンビネーションが生まれる。前線からのプレッシャーがかかり、後ろが連動して動く、組織的な守備が可能になる。
長谷部は語る。
「まだ関係は良くなるというか、良くしていかなきゃという感覚。このチームはこれまでメンバーを固定しないでやってきたので、コンビネーションが上手くいかなかった部分があった。ここ5試合くらいはずっと同じ先発メンバーでやっているし、そういう意味ではここからもう少し上げていきたいな、と」
また、チーム全体が90分間、走り切れるようになったことも、見た目の上での大きな変化だ。マガト時代には、ミスをしたらベンチをちらりと見てしまうような、恐怖にかられながらプレイすることが多かったという。実際に試合中に懲罰として交代させられることも、その後干されることもあったのだから致し方ない。
先日、バイエルンのヘーネス会長が「マガトはレモンを絞るように選手を体力の限界まで絞り上げた」と、その采配を批判しているが、そのようなこともなくなったのだろう。生き生きと、それでいて献身的にチーム全体が動いている。アウェーでは、守るか蹴るかの2択だった頃のサッカーとはまるで違う。
ホッフェンハイム戦は3-1の快勝。口火を切ったのは長谷部のヘディング弾だった。前半7分、中央から左に展開し、左サイドのオリッチがスピードに乗り、速いクロスをゴール前に入れる。ボールは中央の味方とDFの間を抜け、それを右サイドからゴール前に入っていた長谷部がフリーで合わせ、見事にネットを揺らした。リーグ戦では実に昨年8月以来のゴールだ。
「1年ぶりなんですか? 覚えてないくらいです(笑)。いわゆるごっつぁんゴールで、決めないと恥ずかしいです」と、嬉しそうに話し、照れくさいのか話題を逸らした。
「でも、その後にあったフリーのチャンスのほうが。あれを決めていればもっと楽なゲームになったと思うし、そういう意味ではまだまだ課題はあるかな」
前半37分、右サイドで「ど」がつくほどのフリーでシュートチャンスを迎えたが、これを外してしまったシーンを指している。それでも、かつてのように本職ではないサイドバックで出場している時とは全く充実感が違うようだ。
「このポジションで出るからには年間最低5点くらいは取らないとな、というのがあるんですけど、意識しているのはセンタリングに対して入っていくこと。その中で点がとれたのは良かったです」
ミックスゾーンの光景も変わった。この日、長谷部はドイツ人記者達に囲まれ、想像以上に流暢なドイツ語でにこやかに談笑していた。時に選手達に箝口令めいたものが敷かれ、日本人記者に対しても「ドイツ語で書かれたら困るから」などと言いながら困った表情でミックスゾーンを去ることもあったことが信じられないほど、和やかなムードが漂う。
1人の監督が交代したことで、これだけチームの雰囲気が変わるのか。快勝の後にもまだ驚かされた一戦だった。
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20121121-00000302-sportiva-socc
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