サッカージャーナリストの渡辺達也氏、杉山茂樹氏、浅田真樹氏が、好調ザックジャパンの問題点を探る識者座談会。最終予選で圧倒的な強さを見せているものの、W杯本番での飛躍を願ってチームを検証してみると、思わぬ不安要素があちらこちらに隠れていた――。
――ほぼ固定したメンバーで戦っているザックジャパンは、交代する選手の顔触れも決まっているような気がします。しかもその交代は、ほとんど終了間際。そうした状況がこのまま続いていいのか、心配しています。
渡辺:ザッケローニ監督の選手交代には、確かに疑問を感じることが多い。リードしている展開では早めに選手を代えるけれども、苦戦しているときはまったく動かない。自分なりに意図する部分はあるのかもしれないが、選手交代ではすべてが後手、後手に回っている印象が強いね。
杉山:流れの中で、状況が悪いものを良くする交代ができないよね。
浅田:例えば、先日のアウェーのオマーン戦(11月14日/2-1で勝利)で言えば、単純に本田(圭佑)を代えれば良かったのではないかと思う。
渡辺:あれは、前半で本田を変えなきゃいけない。本来、自らボールをキープして突破口を切り開いていける選手だけれども、オマーン戦では明らかにコンディションが悪く、動きが鈍かった。それは、本人もわかっていたと思うし、交代させられても納得したと思うけどね。
杉山:本田は試合の2日前にチームに合流して、それも氷点下を記録しているようなロシアから来た。それでいきなり気温30度を超える場所でプレイするなんて、暑くてたまったものじゃないよ。頭の中が整理できていなかっただろうし、見るからに体の動きがおかしかった。
――にもかかわらず、本田選手は交代することなく、フル出場。ザッケローニ監督は、本田選手の不振を見極められなかったのでしょうか。
杉山:要するに、ザックジャパンにはヒエラルキーがあるんだと思うよ。ザッケローニ監督の中には、選手の序列が明確に決まっているんじゃないかな。
浅田:それは言えますね。結局、本田は外せないのか……、と何か釈然としないものを感じました。
杉山:常識的な選手交代は、勝っていても負けていても、ひとり目の交代がだいたい後半15分から20分くらい。そして、30分前後にもうひとり入れて、勝っているときは余裕残しておいて、40分過ぎに最後のひとりを投入するっていうのが、普通のパターンだと思うんですよ。もし流れが悪ければ、それぞれ10分前倒しにする感じ。ところが、ザッケローニ監督は、40分以降にバタバタと交代させるイメージが強い。そこで出場する選手はちょっと可哀相だよね。ボールをまったく触らないことだってあるし。
――それでも、オマーン戦では酒井高徳選手と細貝萌選手の投入が当たりました。あらゆるメディアで「采配的中!」と評されました。
杉山:あれは、結果オーライ。引き分けでOKという交代をしたら、選手ががんばってくれて、思いも寄らなかった点が入っちゃっただけ。それは、ザッケローニ監督だってわかっているよ。つまり、あれを「見事な采配だ」と騒ぐほうがおかしい。
渡辺:何にしても、後手、後手に回ったときの選手交代はちょっと怖いというか、心許ない気がするね。
杉山:監督の能力を見るにはポイントがふたつあって、ひとつは試合前に決める基本的な戦術やメンバー配置。そして、もうひとつ重要なのが試合中のメンバーチェンジ。強いチームを相手にして番狂わせを起こすには、目の前の試合の状況を分析して、敵を混乱させて自らに流れを引き寄せる選手交代の能力が絶対に求められる。ただそれが、ザッケローニ監督の采配からは今のところ見えてこない。
渡辺:流れが悪ければ、思い切って2枚(選手を)代えしてもいいと思うことがあるけど、そういうシーンを見たことない。
杉山:そう。一気に3人代えてもいいと思いますよ。とにかく、世界の強豪を驚かせるような采配を見せてほしい。別にアジアで勝つだけでいいなら、何も文句は言いません。でも、目指しているのは世界で勝つことでしょ。ならば、そういうことができなければ、W杯で上には行けないと思う。
浅田:メンバーを固定している点と同様、ザッケローニ監督は自分が選手を試していないから、いざ選手を代えたいというときに、適した選手が手駒の中にいないんでしょうね。
杉山:自分で自分の首を絞めちゃっている部分はあるかもしれないね。
――先発メンバーも交代選手も決まっているということは、かなりの閉塞感を感じます。だから最近、ザックジャパンの試合を見ていて「物足りない」と思ってしまうのかもしれません。
浅田:選手交代も含めて、すべての選手起用が適材適所というより、ヒエラルキーに基づいて行なわれている感じがするからね。岡崎(慎司)がいないから、岡崎的な選手を代わりに入れるんじゃなくて、2列目の選手の中で次の順位は清武(弘嗣)だから清武を入れるという具合に。
杉山:その次が、今は乾(貴士)なんじゃないかな。
浅田:例えば、香川(真司)の代わりは清武でもいいけど、岡崎の代わりを清武にしてしまうと、ブラジル戦なんてまさにそうだったけど、2列目の3人がみんな中央に入ってきてしまう。そうした選手起用を見ていると、ザッケローニ監督は、本当に選手の特性を見ているんだろうか? と勘ぐりたくなる。
渡辺:とにかく、いろいろな選手をもっと試してほしいよね。そうすることで、チームの可能性が広がるわけだから。
――守備面についても、少し聞かせてください。最近話題にならなくなりましたが、世界を相手にしたとき、センターバックの今野泰幸選手の“高さ”は心配しなくてもいいのでしょうか。
渡辺:高さは、今野だけの問題じゃない。日本全体が抱えていること。
浅田:今野に高さはないけれども、それ以上に、むしろ今野を使うメリットのほうが大きいと思う。
杉山:オマーン戦の先制点のときも、今野はスルスルと上がっていって長友(佑都)にいいパスを出したけど、彼が攻撃面で果たしている役割は大きい。もともとボランチの選手で、遠藤(保仁)の代わりにもなるような選手だと思うよ。
――本田選手や遠藤選手が不在になったらどうするのか、というテーマがよく話題になりますが、今野選手も同様に貴重な存在というわけですね。
杉山:今野が、ザックジャパンでは一番キーになる選手だと思う。今野の代えは利かないよ。
浅田:あれだけボールをさばける日本人のセンターバックって、あまりいないから。過去の日本代表と比較しても、今の日本代表の強みはセンターバック。そこから中盤にいいボールが入れられる。
杉山:放り込んでくるサッカーはレベルが低いチームに多いし、W杯でベスト8に入ってくるようなチームはあまり高さを生かしてこない。だから、今野の高さはそんなに気にしなくてもいいと思う。それより僕は、吉田麻也のほうがちょっと心配。フットワークというか、スピードに物足りなさを感じる。
渡辺:プレミアリーグでも、相手に裏をつかれて、やられるシーンが目立っているね。
杉山:相手が(アジアのチームより)もう一段高いレベルになったら、後手を踏む可能性がある。だったら、俊敏なセンターバックを使ったほうがいいかもしれない。
渡辺:もちろんプレミアリーグで鍛えられて、成長してくれればいいんだけどね。
――遠藤選手や本田選手に限らず、今野選手や岡崎選手、さらには前田遼一選手など、代えの利かない選手ばかりですね。そうすると、ザックジャパンはベストメンバーの11人がそろわないと力を発揮できないことになってしまいます。
杉山:予選突破が決まるまではメンバーを代えられないというなら、それでもいいでしょう。でも、その後も新たな選手を試さずに同じことをやっていたら、ブーイングしたほうがいいだろうね。
浅田:W杯出場が決まっても、現状と同じことを続けていたら、いよいよ緊急事態かもしれない。
杉山:極端なことを言えば、(監督を)代えたほうがいい。
浅田:本当の意味で、ザッケローニ監督を評価するひとつのポイントになるでしょうね。
渡辺:なんだかんだ言っても、W杯ベスト8というのは、簡単なことじゃない。現状でよしとしないで、指揮官には常に思い切ったことをやっていってほしいね。
杉山:昨今は、案外ベスト8に入るチャンスが出てきている。確かにスペインは強いけど、スペインがずっと勝っているということは、世界のレベルはそんなに上がっていないわけですよ。今のイングランドあたりなら、日本代表でも勝てると思うし、オランダだってそんなに強くない。昔はベスト8に入ることは本当に大変な話だったけれども、今はその可能性が広がっている。せっかくのチャンスなんだから、日本代表にはそれを生かしてほしいんですよ。
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コメント一覧
オマーン戦前のザックのインタビューから察すると勝ちたいようだったし
FWをDFに変えたのは俺も度肝は抜かれたけど、直後から日本の動きだしは明確に良くなったし、単純に引き分け狙いと決め付けるのはちょっとね・・・
浅田や渡辺なんてのも初めて見たけど、読む限り汚杉と同レベルのアホウだわ。
いい加減この手の劣悪サッカージャーナリストやライターモドキの篩い落しをやっていかないと、
何時まで経っても日本サッカーの成長の足を引っ張るからな。
だから奴等は所詮四流五流でしかないのだ。
いい加減身の程をわきまえろ。ネズミの知恵では獅子の心は計れないよ。
選手の能力を把握出来てないのは自称サッカージャーナリストのてめーらだカスw
ほんま腹立つわ
こいつらはしね
テクストの読解と取捨選択は読み手の自由。知らなくたって一向に構わない社会の隅っこというのは在るものだ。
把握してないのならこの成績は残せないし、把握してなくてこの成績ならなおすごいわ。
全員賞賛というのもとても困るが、これからの日本のサッカーのためにもこいつらは排除すべきだと思うがね。これなら批判役と分かって批判してるセルジオさんの方がまだまし。彼も論点ずれてることが多いから嫌いだけど。
>杉山:放り込んでくるサッカーはレベルが低いチームに多いし、W杯でベスト8に入ってくるようなチームはあまり高さを生かしてこない。だから、今野の高さはそんなに気にしなくてもいいと思う。それより僕は、吉田麻也のほうがちょっと心配。フットワークというか、スピードに物足りなさを感じる。
頭わいてるわー。
遠藤の代わりが今野とか。。。彼は、CBとしても攻撃参加できるから価値があるのであって、ボランチであの働きではちょっと・・・
しかも、ザックは高さ対策も結構気を使ってると思うよ。放り込みに弱いってなれば、本番では、どんなチームでも徹底的にそこを突いてくるし。イングランド、ドイツ、オランダなんかに放り込みやられたら、日本は、相当いやだと思うけど。だから、吉田外すとしたら、それと同等ぐらいには空中戦できる人を置かないとだめだと思うわ。