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 1月6日の前節、チャンピオンズリーグ出場枠を争うローマとの直接対決を4-1でものにし、首位ユベントスを筆頭にインテル、フィオレンティーナらライバルが負けたというのに、ナポリの監督、マッザーリは不機嫌で苛立っていた。試合後の各局テレビ番組のインタビューでは、解説者に悪態をついたり、勝手にインタビューを打ちきって画面から消えてしまったのだから、見る側は呆然だ。

 彼がブチンと切れたのは、要約すると「ナポリは守備的で、勝てたのはカバーニのお陰」という試合評を耳にしたせいなのだが、この日のナポリが守備力でローマに差をつけ、カバーニがハットトリックを決めたことを考えれば、少々過剰すぎる反応である。

 マスコミ対応という意味での社交があまり得意ではない彼の性格によるところもあるだろう。カバーニのハットトリックを可能にした戦略とチーム力をもっと認めて欲しかったこともあるだろう。だが、その態度からは、何よりも彼が抱える精神的ストレスの大きさを感じずにいられない。

 自らの契約が今季いっぱいで切れ、オーナーからは2位や3位ではなく「タイトル」を求められ、その割に見合った補強は必ずしもなされず、生え抜きを育てるプロジェクトはいまだ本格発進する気配がない。

 ホームスタジアムであるサンパオロの芝も最悪だ。これは開幕前から言われ続けていることなのだが、マッザーリの目にはそれを何が何でも解決しようとフロントが汗(と金)を流しているようには見えていないようだ。

 12月に下された八百長判決も追い打ちをかけた。これはユベントスのコンテ監督らに下されてきた審判の一連のものであり、”一審”に当たる今回の判決では、ナポリのパオロ・カンナバーロとグラーバに6ヵ月の出場停止、チームに対しては監督責任で減点2となったのである(もしこの減点2がなければ、ナポリはラツィオと並んで現時点でセリエA2位となる)。

 名誉のために明確にしておくと、カンナバーロとグラーバは八百長に関わっていたのではない。彼らは持ちかけられた八百長を拒否して一切関わっていないのだが「話をもちかけられたことをサッカー連盟に報告しなかった」ために罪になったのである。

 シーズンまっただ中に裁判が行なわれ、判決を待つやるせない空気の中で選手を試合だけに集中させるのは監督として苦しく困難だったはずである。しかもカンナバーロはチームキャプテン、グラーバはナポリ愛を体現しているような選手で、セリエC2(4部リーグ)から復活したナポリ最後の生き証人なのだ。

 1月17日に上訴の場が与えられており、そこがだめでも”最高裁”に当たるイタリア五輪委員会へ持ち込む覚悟だが、1月の移籍市場では、カンナバーロの穴を埋めるためのCB補強はマッザーリにとって必須である。ヨーロッパリーグという過酷な移動を強いられるカップ戦にナポリは残っているからなおさらだ。

 サポーターの間からはマッザーリのトレードマークにもなっている3バックの見直し要望も根強くあがっている。両サイドを下げて4バックにすれば、CBで必要な選手数は3から2に減るから、カンナバーロ問題への対策としても有効だ。

 ナポリは今までも試合途中から4バックにすることはよくあったし、バリバリの3トップを敷くローマとの戦いでは最初から実質上4バックだった。ナポリの武器はズニーガ、マッジョによる両サイドの突破にあるから、マッザーリとしては今まで通り3-4-1-2を貫きたいところだろうが、今後の補強次第ではベースとなるシステムを変更する必要に迫られるかもしれない。

 20日に組まれているフィオレンティーナとの直接対決から、サンパオロを離れての2試合連続アウェー、そして2月にはヨーロッパリーグが待っている。ここからの1ヵ月半がナポリにとってのひとつの山場となりそうだ。

内海浩子●文 text by Uchiumi Hiroko