サッカーニュースを中心としたまとめ


2013年02月14日

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冬の移籍市場が閉じた翌日の2月1日、『タイムズ』紙(イングランド)の第1面には、パリ・サンジェルマン(PSG)の記者会見場で微笑む、デイビッド・ベッカムのクローズアップ写真が掲載されていた。元代表キャプテンは、3カ月後には38歳になる今でも、イングランドが世界に誇るスターであり続ける。

 もっとも、本来のスポーツ面が5ページ目に回されていたように、母国イングランドでの扱いは、「スター選手」よりも、純然たる「スター」に近い。国内他紙を見ても、PSG入りを伝える記事には、精度抜群の「クロス」ではなく、収益力抜群の「ブランド」という単語が目立った。

 イングランド国内のサッカーの現場でも反応は同様だ。例えば、アーセン・ベンゲル監督。

 アーセナルのフランス人監督は、昨年12月の米国MLSシーズン終了後に年末から調整目的でアーセナルの練習に参加していたベッカムの移籍先が決まると、「彼はグローバルなブランドだ。世界中の視線が、PSGとフランスのリーグに注がれる」と、その名声がフランス・サッカー界にもたらすメリットを強調した。その数日前には、アーセナルが獲得に動く可能性を問われて、「豊富な経験と高いプロ意識で若手の手本になれる」と、現時点での能力には触れない褒め言葉に留まってもいたのだった。

■PSGが欲したのはベッカムの絶大なる“ブランド力”。

 PSGが、ピッチ外での効果をも見込んで獲得に動いたことは間違いない。

 移籍市場最終日の契約発表が、その証拠だ。LAギャラクシーとの契約が満了していたベッカムは、市場閉幕後でも契約可能なフリーエージェントだった。アーセナルで“自主トレ”は行っていたものの、丸2カ月間も実戦を遠ざかっているベテランは、即座に試合で使えるコンディションにもなかった。

 にもかかわらず、1月31日にメディカル、そして契約締結となったのは、クラブ側が、世界中のメディアが移籍市場の動向に注目している最終日に、最大限の露出を狙ったからだろう。同日に世界を駆け巡ったPSG入りの速報は、カタールからのオイルマネー注入で“メガクラブ”化を狙う、パリの成り上がり途上クラブの存在を、昨夏のズラタン・イブラヒモビッチ獲得を凌ぐ規模で、世に知らしめたに違いない。

■高額報酬を全額寄付してもビクトリア夫人は喜色満面!?

 ベッカム側にも、PSGとの短期契約によるピッチ外での利点はある。フランスの最高所得税率は75%になると言われているが、今季終了後の6月末までの5カ月契約で、家族はロンドン在住となることから、ベッカムは同国税法上の居住者とはならない。つまり、スポンサー収入など「ブランド」としての巨大な副収入に対して、英国より25%も高い税をかけられずに済む可能性が高いのだ。

 おまけにパリは、ファッション・デザイナーが本業となりつつある妻ビクトリアにとって、願ってもない“ファッション・キャピタル”ときている。ブランド『ビクトリア・ベッカム』の本格的なグローバル展開が予定される中、リーグ1の新たな「顔」となる夫は、パリ社交界への「扉」も同然。彼の人気度は、5億円台と推定されるPSGからの報酬全額を、パリ市内の児童基金に寄付する発表で更に高まった。夫人は、海外だがユーロスターで2時間15分程度の都市に夫を訪ねる度に、パリの要人たちとも時間を重ね、国際デザイナーとしての足場を固めることができるだろう。

■出場機会にこだわるベッカムにとってもベストの選択。

 しかしながら、今回の移籍を、母国メディアのように単なる「ブランド戦略」の一言で片付けてしまうのは酷だ。ギャラクシーを去る前に、「もう一花咲かせられる」と、現役へのこだわりを見せたベッカムは、あくまでもトップレベルでの試合出場に主眼を置いて移籍先を選んだはずだからだ。

 プレミアリーグ復帰に関しては、「マンチェスター・ユナイテッド以外はあり得ない」と、古巣への忠誠を貫いてきたが、妻と子供たちと暮らせるイングランド復帰に、魅力を感じなかったはずはない。家族は、ロンドン郊外南西部に住居を構える予定で、長男ブルックリンは、チェルシー・アカデミーのトライアルに合格してもいる。噂の移籍先には、ウェストハムとQPRのロンドン勢も挙っていた。

 だが、中位狙いのウェストハムと、降格候補のQPRでさえ常時出場が確約されない状況は、「マンU愛」に背くこと以上に堪え難かったのだろう。その点、PSGは、同じポジション争いを強いられる境遇でも、チームは1994年以来のリーグ優勝を狙える状態にある。そのリーグ1は、欧州主要リーグの1つでありながら、試合展開の速度とフィジカルの程度において、プレミアほどベテランMFにとって過酷ではない。

 しかも、PSGは、世界最高峰と言われるCLでベスト8以上の可能性も残している。リーグでの優勝とCLの「原動力」とまではいかないだろが、戦力として貢献さえできれば、2009年と2010年に短期レンタル移籍したACミラン当時のように、絶賛はされなくても、「まだ通用する」との評価は得られるだろう。仮に、現役最後の5カ月間になったとしても、トップクラスを印象づけたままスパイクを脱ぐことができる。

■運動量の衰えが目立つベテランをどう起用するのか?

 では、現在のベッカムは、どの程度の戦力になれるのか?

 その右足からピンポイントで送られたクロスを、エースのイブラヒモビッチが華麗なテクニックでゴールに変える得点シーンは、PSGファンならずとも夢見てしまう。しかし、夢が現実となる機会はそれほど多くはなさそうだ。というのも、出場の可能性が最も高い持ち場は、中盤右サイドではなく、中盤最深部だと思われるからだ。

 チームは、昨年末から4-4-2を基本システムとしている。10年前であれば、定番の右サイド先発も期待できたベッカムだが、昔からスピードが武器でなかったとはいえ、30代後半の近年は、アウトサイドでアップダウンを繰り返すための運動量も衰えている。序盤戦ではトップ下を務めていた、アルゼンチン代表のハビエル・パストーレ、ブラジル人新戦力のルーカスらとの右ウィング争いに勝てるとは思えない。

■「勝者のメンタリティ」を知るベッカムが若手の手本に。

 となれば、残る適所は中央の一角。PSGを率いるカルロ・アンチェロッティが、ミラン監督時代にベッカムを起用したポジションも、やはりボランチだった。

 セントラルMFの競争相手にも、チアゴ・モッタ、ブレイズ・マテュイディ、マルコ・ベッラッティらがいるが、常に安定感を醸し出せるのはモッタのみ。そのモッタは、怪我の多さが泣き所だ。今季もリーグ戦10試合出場のみで2月を迎えている。20歳で、母国イタリアが「アンドレア・ピルロの後継者」と期待するベッラッティにとって、奪ったボールをレンジの広いパスで巧みに散らすベッカムとのコンビは、貴重な学習機会となるだろう。

 そして何より、チームの「腹部」にベッカムが加わることは、大化け途中の集団に、安心感をもたらすことになる。国内外で重圧が増す終盤戦では、主軸としての国際経験も豊富で、プレッシャーのハンドリングに長けた歴戦の強者が頼りになるが、PSGにはイブラヒモビッチ、モッタ、そしてCBチアゴ・シウバの3名しかいなかったのだ。

 中でも依存度の高いイブラヒモビッチは、昨年11月の時点で、「勝者のメンタリティ」を理由にベッカムの移籍を希望していた。

 指揮官も、「(パオロ・)マルディーニは38歳でCL勝者となった」と、ミラン時代の絶対的リーダーを引き合いに出して、37歳の加入を歓迎している。

■ベッカム本人も「自分はベストを尽くすだけ」と現実的。

 実戦不足もあり、まずはベンチスタートが続くはずのベッカムは、チームがリードしている試合後半に投入されれば、正確なボールタッチとパスでポゼッション維持に努めながら、逃げ切りに手を貸すだろう。追う展開でベンチを出れば、イブラヒモビッチへのロングパスも厭わないはずだ。

 次第に出場時間が増えれば、セットプレーを担当する回数も増える。FKから直接ゴールを狙えるプレースキックは、年齢による衰えとは無縁の個人技だ。

 アンチェロッティが「まずは調整が先決」と慎重なスタンスをとれば、当のベッカムも、「2、3週間あれば。先発の可否は監督が決めること。自分はベストを尽くすだけ」と現実的だ。

 ピッチの内外で、全てが「賢明」なPSG移籍。今季終了時には、19年ぶりのPSGリーグ優勝の戦力となり、結果としてブランドの輝きを保ったベッカムの笑顔が、イングランド国内各紙のスポーツ第1面に掲載されていることを願う。


(「プレミアリーグの時間」山中忍 = 文)






1 :SAMURAI footballers がお送りします

ベッカムの存在ってサッカーにとって貴重な存在だと思う。次のベッカム枠候補って誰かな? 



2 :SAMURAI footballers がお送りします 

戦力と言うよりも「ブランド」としての獲得をした




3 :SAMURAI footballers がお送りします 

ベッカムのFKは世界一



引用元:http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20130213-00000001-number-socc&pos=1










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