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マインツ番記者が見た、武藤嘉紀の第一印象
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20150711-00010000-fballista-socc


9日に開かれた武藤嘉紀のマインツでの初会見は、現地ドイツでどのように受け入れられたのか。『キッカー』誌でマインツ番を務めるベニー・ホフマン記者のファーストインプレッションは、非常にポジティブなものだったという。

 武藤嘉紀はマインツの一員として最初の公式の場で、強烈な印象を残した。

 きちんと整えられた身だしなみ――マリンブルーのスーツにネクタイ、白い花のようにハンカチが胸元のポケットに差し込まれ、足下は黒い革靴――で会見場へと足を運んだ彼はその容姿で、マインツの会長であるハラルド・シュトルツすらも脇役へと追いやってしまった(シュトルツは、公の場では常にオシャレな格好が目を引くことで有名なのだ)。

 彼のプレースタイルは、監督であるマルティン・シュミットのコンセプトにぴたりと当てはまるだろう。このスイス人指揮官はプレシーズンのトレーニングが始まる前に「今、ウイングのポジションには4人の大砲がいる」と語っている。そのうちの一人である武藤には、マインツにとっては大金である280万ユーロ(約3億8000万円)の移籍金もあって大きなプレッシャーがのしかかっているように見受けられる。しかし、マネージャーのクリスティアン・ハイデルは今週のはじめに「プレッシャーをかけるようなことはあり得ない。だからこそ、4年という長期契約を結んだんだ」と私に打ち明けてくれている。

 それは正しいことで、武藤にとっても良いことであろう。マインツやブンデスリーガの関係者の誰一人として、22歳と若い武藤が彗星のように現れ、いきなり大活躍するとまでは思っていない。ブンデスとJリーグとの間にある違いは決して小さくないと考えているからだ。これに関して私は、昨季セレッソ大阪でコーチを務めていたドイツ人コーチのカルステン・ラキースに話を聞いた。彼の評価は「Jリーグはブンデスと比べて、技術的に非常に高いレベルにある一方で、戦術や試合のテンポの速さにおいては見劣りする」というものだった。

 戦術と身体的な当たりの強さへの適応。この2つが、武藤がこれからドイツの地で活躍していく上で身につけなければならない重要な点になる。その上で、マルティン・シュミットという監督はまさに打ってつけの存在だ。彼はスプリントや競り合いといったフィジカルを全面に押し出すサッカーを好んでいる。加えて、FC東京からやって来たウインガーに、カウンター時に必要なスピードが備わっていることは参加した最初のトレーニングで見て取れた。時差ボケを抱えているはずにもかかわらず、22歳のFWは常に存在感を示していた。会見の席では「ドイツのDFは頑強で、脚の長さも違う。そして、彼らは前後左右、四方八方からボールを奪おうとしてくる」と口にしていたが、少なくとも最初の練習での彼は一対一の競り合いにも果敢に挑み、ボールを失うこともなかった。

■記者たちの“ざわめき”の理由

 武藤のプレーぶりは、見守ったジャーナリストたちを満足させるに足るものだった。また、「世界でトップレベルの選手の一人になりたい。そのためには、ハードワークをしなければならない」という彼の積極的なコメントは、記者たちの間に“ざわめき”を起こさせた。ドイツ人のサッカー関係者は日本人の飽くなき向上心を評価しているが、一方で今回の武藤のように、それをはっきりと言葉にする印象はなかったからだ。

 武藤はマインツへ移籍する前に、ゼネラルマネージャー(GM)のクリスティアン・ハイデルと会談している。このマインツのGMは5月に、選手と直にじっくりと話し合うためだけの8時間の滞在のために、往復30時間をかけてまで東京を訪れた。そのハイデルの行動は、武藤が「感動した」と認めるように、強烈なインパクトを残した。そして、レスターに移籍した岡崎慎司が武藤に送ったメッセージもだ。この2人がともにピッチに立つ姿を見れなかったのは残念でしかたがない。岡崎がいれば、武藤にのしかかる期待をいくぶんか和らげることもできただろう。

 しかし、その自信をともなった謙虚な振る舞いからすると、武藤は物事を現実的に捉えることができる人間だ。彼はオープンに人々に話しかけ、常に口元の笑みを絶やさない。そして、必要な真摯さも持ち合わせている。彼がこれから受けるプレッシャーに耐えられるかどうか。その答えを、この移籍に関して詳しいジャーナリスト仲間が教えてくれた話が示してくれるだろう。昨年の10月22日のことだ。彼の古巣であるFC東京はサンフレッチェ広島と対戦した。観客席にチェルシー、レバークーゼン、そしてマインツのスカウトが陣取っていたその試合で武藤は、チームを2-1の勝利へと導く決勝点を決めると、それ以降上昇気流に乗ったかのような活躍を見せ続けた。彼はすでにスカウトたちへ強烈な第一印象を残していた。スーツもネクタイも身につけることなく。

文/ベニー・ホフマン(『キッカー』誌マインツ担当)
翻訳:鈴木達朗